「彼女(たち)と角田光代」

1月22日に鹿児島市で開催される「となりの角田光代トークライブ@月の舟」の連動企画です

vol.2「彼女と〈家族〉と角田光代」

 

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「子供を連れて行って良ければ」という条件でインタビューを承諾してくれたシオリさん。それはもちろんオッケーだし、娘さんのユイちゃん(4歳)はつばめ文庫さんの大ファンということなので、つばめ文庫さんをお借りしてのインタビューとなりました。お母さんであるシオリさんがインタビューに応じるあいだ、ユイちゃんはひたすらお絵描き。上に貼り付けてある絵もその時に描いてもらった一枚です。つばめ文庫さんの似顔絵ということですが、うーん、雰囲気つかめてるなぁ

取材日:2016年12月 場所:つばめ文庫*1 文/編集:ふくちあつし

 

過酷が好きなんですよね。一人ぼっちで

 

――シオリさんはこれまでどんな本を好んで読んできたんでしょうか?


シオリ:私は冒険ものっていうか、過酷な、ありえないでしょって話が好きです。例えば、北極をひたすら歩き続ける人の話とか。実際にあったノンフィクションの冒険とか探検ですね。現実とはかけ離れていて、自分ではありえないような「なんでそれするの?」って話が好き

――シオリさんって自転車でアクロバットをしていたりとか、ストイックな人ってイメージがあるので、そういうのが好きなのは、なるほどって気がします。過酷さに共感してるんじゃないですか?

シオリ:そうですね……。過酷もそうだけど、怪我は多いし、怖い。命の危険のあるし

――スリルというか、ドキドキするものが好きなんですかね

シオリ:そうですね、多分そうかも

――角田さんの作品だとそういうドキドキはないですよね

シオリ:そうですね。でもこの前読んだ『ロック母』に入っていた「緑の鼠の糞」はちょっとスリルがあるかなって。旅って感じがして好きです

 

ロック母 (講談社文庫)



――旅が出てくる作品も多いですね

シオリ:『キッドナップツアー』とかも面白かった。移動、っていうか別に目的はないけど、「とりあえず出ちゃえばなんとかなる!」っていう感じで、そこから色々なことが起きてっていう流れが読みやすくて好きでした


――シオリさん自身は旅するんですか?

シオリ:独身の頃は、無謀な旅をしてました。バックパッカーとか。高校生の頃にニュージーランドにいたんですけど、その時に学校とか色々嫌になって。バックパックに荷物を詰めて、バスに乗って、それから自転車でぶらぶら。「なんかないかな~」って、それこそ自分探しって感じ。自転車に乗る場所がたくさんあったから、そういうところを目指して行けば誰かいるだろうっていう感じで。ゲストハウスに泊まったりしながら

――角田さんの作品以外で旅ものの本とか読んだりはしますか?


シオリ:うーん、世界でヨット一周とかそういう感じの

――過酷系の(笑)

シオリ:過酷が好きなんですよね。一人ぼっちで

――「一人」がポイントなんですかね、バックパッカーもそうですが

シオリ:一人、好きですね。一人が大事。一人が一番楽ですね。3人でアメリカに旅行に行った時は色々とめんどくさかったな(笑)みんなで映画に行こうってなってる時に、「でもわたしは英語わからないから見に行きたくない」とかって子もいて。私は行きたいんだけど、「この子達を置いて一人で観に行ってもいいのかな?」って

――結局どうしたんですか?

シオリ:「外国で映画観れるのっていましかないんだよ!別に英語わかんなくても雰囲気で楽しめばいいんじゃない」とか言って強引に説得しました。超強引に(笑)

 

一人で階段をサーっと歩くときとかすごい楽しい


――一人が好きって、読書が好きな人には多いと思うんですよね。家族ができたりするとそれってどうなるんですかね?ぼくは結婚とかしてないからそのあたりが気になるんですが

シオリ:一人の時間欲しいですよね。一人で階段をサーっと歩くときとかすごい楽しい

――階段を……?どういうこと!?

シオリ:分かんないですよね。だって子供連れてたら一歩ずつ降りるのを待ってて、やっと下まで来たと思ったら、なにか見つけて戻ったりとかして。すごい時間かかるんだけど、一人だとサーっと降りて、パーッと登って。エレベーターとかも子供と一緒だと、階段で済ませられるところをわざわざエレベーターに行くんだけど、人がいっぱいだから一回見送ってとか普通にあるので。3倍とか時間かかります、何事も。

――自分以外の人間とペースを合わせないといけないってことですね、家族として暮らしていくには。『空中庭園』とかそういう他人と暮らすことの「ズレ」を描いている部分があると思うんですが、どんな風に読みましたか?

 

空中庭園 (文春文庫)


シオリ:最初が、家族に秘密を作りたくない言っていうお母さんの話ですよね。なにもかもオープンに家族を作りましょうっていうお母さん。それで、私が育ってきた家族は何事も謎ばかり、秘密ごとだらけの家族で。例えば、中学生の頃「あなたには会ったことのないおばあちゃんがいるのよ」みたいな

――それはお祖母ちゃんが3人いたってことじゃなくて、2人のうち1人に全然会ったことがなかったてことですか

シオリ:そうそう。死んだと思ってたし、おじいちゃんは2人だけど、おばあちゃんは1人っていう認識で、ずっと。でも中学生のときにはじめて戸籍謄本を見たときに「あ、私もう1人おばあちゃんいたんだ」っていう。まあ当たり前なんだけど(笑)でもお父さんの家族のこととかもそのときはじめて知って。色々と秘密ごとが多くて「あ、お父さんってこういう人だったんだ」っていうのを後々知ったりとか。まあ私もあえて聞かなかったんだけど。ウチの家族は全体的にコミュニケーション不足っていうか。だからなんでもオープンにはなせて仲良くやってる家族がちょっとうらやましかった。ウチは違うけど家族ってそういうもんなんだろうなって、理想みたいにしてるところがあって。でも『空中庭園』を読んだら「あ、違うんだな」って。オープンな家族を作ろうとしても結局は秘密が残ってしまう

――全員が全員のことをちょっとずつ誤解していて、結果的にそれが秘密になってしまっていますよね

シオリ:結局オープンにしても嚙み合ってないですよ

――この人たちはコミュニケーションをとってるけど、それに成功してはいないっていう

シオリ:でも、良かったのは、おばちゃんが出てきましたよね、うるさいおばあちゃん。おばあちゃんはおばあちゃんなりに、悩んで、考えてアクションを起こしてるんだなっていうのには愛情を感じました

――いま育ってきた家族の話をしてもらいましたが、シオリさんはいまお母さんとして家族を作っているところじゃないですか。そういう視点ではどう思いますか?

シオリ:理想は、なんでも話せる家族を作りたいですよね、私も。って思いますけど、やっぱりそれはぎこちないというか、無理かなっていう。今後ウチの子供たちが高校生になって気難しい年頃になったときに、なんでも話せるようになっていればグレないのかなっていう思い込みはあったんですけど、そうじゃないんですよね、きっと。うーん……。みんなそれぞれの世界がありますよね、この小説の中でも。みんな家族の知らない別の顔がそれぞれにありますよね

――この小説もそうだし、シオリさんの話を聞いていて思ったのは、一人の世界を大切にしたいっていうことと、家族とはなんでも話したいっていうのは、多くの人が両方思うんだけれど、そのバランスって難しいよなぁということです

シオリ:それぞれ別の顔があってもいいと思うし。私も子供たちのすべてを知ることを求めちゃいけないと思います。知らないこともたくさんあって、家族だけど、お互い一人の人間だっていうことを忘れちゃいけないと思いますね

 

やっぱりうまくいかないですよね。母親と長女はとくに


ーー『空中庭園』だけじゃなく、角田さんにはお母さんと子供の話は多いですよね。

 

シオリ:お母さんがすべてをコントロールしようとしてる感じ。人を自分の思うように動かそうとするのは良くないですよね

――シオリさんとお母さんの関係はどんな感じだったんですか?

シオリ:ウチの母は、あんまり何にも言わなかったですね

――角田さん的な「母」とはちょっと違ったタイプだったんですね

シオリ:でも、あまりになにも言わな過ぎるというか。……そのくせに、みたいなね。だからあまり母とはうまくいっていなくて。急に切り離されたっていう感じがしています。連絡もあんまりとってないし。角田さんの小説のすべてをコントロールしようとする母も良くないけど、「でも、なんにも言ってこなかったじゃん」っていう思いは自分の母親に対してはあります

――難しいところですね。バランスが……。角田さんの小説で言うと「ロック母」がちょっとそういう感じの母子関係ですかね

シオリ:ちょうど今朝読んできました。このお母さんは「子供がずっとお腹の中にいればよかった。出てこないで」みたいなことを言いますよね。かと思うと、その娘が妊娠して帰ってきても全然喜んでないですよね。そこはちょっとウチに似てるかも。やっぱりうまくいかないですよね。母親と長女はとくに。母親は自分にできなかったことを娘にやって欲しい。自分の分身みたいに思ってるから。生き方に対しても介入してくるっていうか

――娘の人生をまるで自分の人生かのように扱ってしまう

シオリ:そうそう。でも次女に対してはそうでもない感じですよね。角田さんの作品に出てくるのも長女が多くないですか?

――たしかに、次女の話ってパっと思いつかないですね

シオリ:大体が長女と母の話ですよね

――いまの話を聞いていたら『キッドナップツアー』も父と娘の話が描かれているけど、実は母と娘の関係も重要なんじゃないかと思えてきたんですが

 

キッドナップ・ツアー (新潮文庫)


シオリ:どんなお母さんなのかなっていうのは想像しました。子供の態度で、完全に馬鹿にされてるなっていうのは感じたんですよね。お父さんを見る目もそうだけど。すごくうるさく言われて育ってそうな子ですよね。これが正しい、これが間違っているって

――お父さんを見る目っていうのは、そのままお母さんがお父さんを見る目でもあるわけですよね

シオリ:その割に、お母さんはお父さんに何度も電話するけど、とち狂ったように娘を探すわけでもないですよね。そこはちょっと分からなくて。そこはお父さんといるから大丈夫って感じなのかなとか……?難しかったですよね、これ

――うーん、たしかにつかみどころのないような印象を受けました

シオリ:何回も交渉の電話をしてますよね。でもその電話の内容がなんだったのかは最後まで出てこないし

――この子にとっては秘密が最後まで残る

シオリ:この子のお母さんにも問題があるんだろうなっていうのは思いますよね。だから色々考えて、これはお母さんとお父さんが離婚するって話なのかなとか

――それはチラッと想像はしますよね

シオリ:だから交渉っていうのは親権を巡ってのものだったのかなー、とか思ったりもしたし。でもそれだったら、お母さんは、「お父さんと娘がこのまま二人で自分の知らないところに行ってしまうんじゃないか」って思いで、もっと探すとも思うので。そしたら親権問題でもないのかなって……

――お母さんは、お父さんと娘のどちらにもあまり興味がないようにも感じます

シオリ:じゃあお母さんが不倫してるのかなとも思って。新しい人と結婚するから……とか。そういう感じなのかな~……。分かんないですけど

――書かれていないってことは、逆になにかがあって、それを隠してるってことですよね

シオリ:お母さんとお父さんが一緒になれない理由がすごく気になって。背景が謎すぎますね

「子供がいるから、こういう世界が生まれてるんだな」って思う。

 

――いまちょうどシオリさんは子育て世代なわけですけど、角田作品で言うと『対岸の彼女』がそのくらいの年齢の女性を描いていますよね。これとかはどうでしたか?

シオリ:これもキツかったですね、読んでて。そうだ、この旦那さん、修二にすごくイラっとして、すんごい。いますよね、こういう人

 

対岸の彼女 (文春文庫)



――とくに角田さんの小説にはモラハラ的な夫はよく登場しますよね

シオリ:主婦の仕事を馬鹿にしはじめますよね。「たかがお前の仕事で。なんかもういいんじゃないの」みたいな。そこが、「あ、よくいるなって」感じですよね。家事も含めて、働いてることに対する尊敬がないし。作品の中ではお母さん(サヨコ)の仕事が一つ増えただけで。家事もしなくちゃいけない、仕事もしなくちゃいけない。子育ても。それで馬鹿にされてるし。ひどいですよね。『キッドナップツアー』のお父さんはそうでもないけど、出てくるお父さん大体ひどいですよ。

――『対岸の彼女』は過去と現在でストーリーが同時進行で進んでいくじゃないですか。アオイとナナコを描いた過去パートはどんな風に読みましたか?

シオリ:中学生の女の子二人が電車に飛び込んで自殺したってニュースが今年だったかな、あったんですね。それをすごく思い出して。一人だから寂しくてつらい人が自殺するんだと思ってたんですけど、私は。すごい分かり合えるお友達がいてそれでも自殺しちゃうんだって思ったんですよね、そのニュースを聞いて。なんで二人で、多分寂しくないはずなのに、どういう感じで?って。二人とも死んじゃったから分からないんですけど。『対岸の彼女』みたいにどっちかが自殺しようって言ったのかな……、とか。二人仲良くて、二人の世界があって、楽しくて。だけど現実のそれぞれの生活に戻るのがつらくて。この事件もそうだったのかなって。すごく悲しいニュースだなと思って、あれは忘れられないですね

――そういう心中もしかねないような友情というか、思春期の誰かと一体化したい気持ちってってシオリさんは共感できますか?

シオリ:いや、わからなかったな。共感はしない。「なんでだろう?」っていう

――ぼくは割とこの作品にキラキラしたものを感じちゃったりもするんですが

シオリ:青春キラキラ(笑)?そういうのは見えなかったな。私、一人好きとしてはすごいもったいないなと思っちゃった。中学生とか高校生とかの自殺って話を聞くとすごくもったいないって思っちゃう。世界が狭すぎて。学校でいじめられていて、家族の問題もあると居場所がなくなってしまって、難しいとは思うけど。でも私は居場所って自分で作ってきたような気になってるから。ここがダメだったらあっちに行けばいいや、みたいな

――旅ですよね、まさに

シオリ:まあそれで逃げて逃げて逃げて、ですけど

――アオイも旅行がきっかけで吹っ切れるわけですよね。世界が広がったって感じになる。でも結局、彼女は最後まですごく辛そうなんですが……

シオリ:彼女は子供についてなにか言ってましたよね。「自分は子供を育てる自信がない」みたいな。私もやっぱり子育てしていて、この先大きくなってちゃんと育てていけるかなって自信はないですよね、全然

――アオイとサヨコは一度離れてしまう訳ですが、その二人がもう一度関係を築きなおそうとするきっかけの一つには子供の存在がありますよね

シオリ:私はてっきり戻らないまま終わるんだと思ってました。戻らないままお互いの世界にいるんだと思ってたんだけど、「あ、戻るんだ!」って。また頑張ろうって、希望のある感じ。気持ちいい感じに終わってますよね

――やっぱり良いんですか、子供って?ざっくりした質問ですが

シオリ:友達ができるってきっかけになりますよ。本当は一人でいるのが好きだから友達とか作ろうとしないタイプなんですよ。自分からは声かけようとしないし。だけど子供がきっかけを作ってくれてるから「ああ、この会話が成り立ってるんだ」って思うことがたくさんあります。

――それを面倒に思うことはないんですか

シオリ:それよりは感謝が多いですね。なんだかんだ。こんな毎日キーキーやってますけどなんだかんだ、感謝してます。ごはん作る時も一人だと「カップラーメンでいいか」とか思うけど、「子供がいるから私はごはんつくってるんだな」とか、お母さん友達と話してたりすると「子供がいるから、こういう世界が生まれてるんだな」って思う。もちろん、すごい面倒くさい人とかにも出会いますけどね。うん、けど子供がもたらしてくれる良い環境はたくさんある気がします。サヨコも子供がいるから仕事をはじめるわけですよね

――そうか、子供はきっかけを与えてくれる存在なんですね

 

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シオリ:でも旦那だけは変わらない(笑)私がいつも思うのが、家族って旦那と奥さんと子供じゃないといけないのかなっていう。まあこれは冗談で話してたことなんだけど、一時期すごい料理とかに凝ってた時期があって。で、友達のお母さんに、「ウチの嫁」になって欲しい、みたいな流れがあった。その人は仕事すごいするタイプで、私は家庭のことをするタイプ。だからそのお母さんが仕事に行って、わたしが家事をして、子供を育てて、そういうのも女同士でうまくいくんじゃないかなって。恋愛感情とかはまた別の話だけど、子供を育てるにあたって、そういう環境も面白いかなってね。男と女じゃなくて女性同士だと考え方も近いからうまくいくんじゃないかとふと思ったりすることがあります。やってみたら女同士っていう対立があるのかもしれないけど

 

〈はい、出た。やめればいい〉


――それにしても付箋めっちゃ貼ってありますね

シオリ:読んでもすぐ忘れてしまうから、付箋とかすごい張ってても読み返したあとに、「え?なんでこんなところに付箋をしてるんだろう」とか思ったり

――あ、でも付箋にメモも書き込んでるんですね

シオリ:そう、だからそれを反省して、書いとけば読み返したときの自分へのメッセージになるから

――どんなのがあるか見せてもらってもいいですか

シオリ:「ここから、手をつないでいっせいのせで飛んでみようか」には〈中学生の飛び込み自殺 あった〉とか。「ずっと移動してるのに、どこにもいけないような気がするね」には〈ツリーハウスで似たようなことあった〉。おばあちゃんが、新しいことがあると思ってどこかに行っても別に何にもないんだよって言うところ

――それ上手な使い方ですね

シオリ:あ、これ修二が奥さんが仕事始めた時のセリフで「なあ、無理ならやめたっていいんだぞ」には〈はい、出た。やめればいい〉。ハイ、出た(笑)これ結構私も言われますね、なんでも。やめればいいって。軽々しく言われた、「や、そういう問題じゃないんだよ」って。でも違う目線で見たら「やめればいいのに」って思うことなのかもしれないけど。でも自分は「なんとかしよう、なんとかしよう」ってもがいてるわけですよね。それが思いやりの言葉でもあると思うんだけど。思いやりの部分と馬鹿にしてる部分がある

――修二のそこの台詞は思いやり感ないですよね

シオリ:修二は違うよね。ほかにもありますよ。「人んちの掃除するのもいいけど、それでうちことがおざなりになるんだったら意味ないんじゃないかなあ」には〈言うよね~〉って書いてありますね。仕事して家事がおろそかになると旦那ってこういうこというんだろうなぁ

――シオリさんはお子さんできてからは働いてないんでしたっけ

シオリ:まだないです。でも、もしはじめたら、たぶんウチのなかはぐちゃぐちゃになるとおもうんですよね。だから家のことをちゃんとしないと仕事できないんだな~って。私が仕事したいって言ったら「家のことちゃんとできるの?」って言われそう

――仕事したいとは思いますか?

シオリ:ちょっとは稼ぎたいですね。旦那のお金でお買い物してるって感覚があるから。家事はお給料発生しないし……。「私は家事をしてるんだから、これを買う権利はある」って思うんだけど

――「逃げ恥」じゃないけど、家事も労働ですからね。『対岸の彼女』でも人の家を掃除してお金がもらえるっていうのは、言い換えれば家を掃除したらお金を払えよっていうこともできるわけだし。

家族のカタチっていうことで言うと「ツリーハウス」じゃないでしょうか。女装した父と男装した母らしき人物をみかけるエピソードなんか、そういった「男女一対」っていう両親の在り方を揺さぶってるようにも読めますね

シオリ:外国だと結構、女性同士男性同士で結婚して養子を迎えていたりしますよね。結婚してなくて子供がいる人も。私の外国の知り合いにもお父さんとお母さんとその二人の子供で、どう見ても家族なんだけど結婚してない。もちろん名前も別々で。日本だとあんまりないけど。『ツリーハウス』の家族はそれこそ外国でスタートしたから、「こうじゃなきゃいけない」ってのがないですよね。満州の食堂にかくまってもらった経験があるから

 

ツリーハウス (文春文庫)

 

 

一線を、超えられたかな?


――今日もってきてもらった本だと『12星座の恋物語』って読んでないんですけどどうでした?

シオリ:星座ごとに話があって、私は牡羊座なんだけど、ちょっと苦手だった

 

12星座の恋物語 (新潮文庫)



つばめ:この本、俺の周りだと絶賛する人とそうでない人が半々くらいに別れてる感じだよ*2

シオリ:牡羊座のお話の女の人の雰囲気が読み取れなかった。「アタシ、こんなんじゃねーよ」って(笑)鏡リュウジさんの解説だと牡羊座女は「単純女。シンプルが好き」って書いてあって、私そうなの?

――いや、わかんないわかんない(笑)

シオリ:話としては、愚痴ばっか言ってる飲み会に主人公の牡羊座の女の子が参加して、「つまんない」って言って帰っちゃう

――え、でもシオリさんもそういうとこありそうじゃないですか!

シオリ:たぶんそういう感じだよね、私(笑)

――当たってるじゃないですか!

シオリ:いま言ってて「私じゃん」って思った(笑)私もつまんないなって思ったらさって帰るタイプです。「私、用事あるからかえるね~」って帰っちゃうかも。自分の好きなことする

――興味ないけど場を盛り上げるために頑張るとかそういうことはしなさそうですよね

シオリ:そういうのはないです

つばめ:でもカラオケは好きでしょ?

――カラオケはまた違くないですか(笑)

シオリ:でも、この前みんなでカラオケ行ったのは結構勇気出して行ったつもりです。楽しかったけど誘われて「どうしよう……」ってすごい悩みました。「自分を出すかな~、どうしようかな」って

――カラオケはなんかちょっと一線を越える感じありますよね

シオリ:一線を、超えられたかな?

つばめ:越えてますよ

――つばめさん、そういうのはっきり言うところ、ホント男前ですよね

シオリ:ハハハハハ(笑)

――さっき料理好きって話をされてましたけど『彼女の献立帖』はどうでした?

 

彼女のこんだて帖 (講談社文庫)


シオリ:マツタケご飯の話とか好き。作ったことない料理がたくさんあって、作ってみたくなった。まだ作ってないけど。マツタケをあんなふうにドーンっと買ってみたいなと思いました。角田さんの料理の病者だとやっぱり「緑の鼠の糞」のアジア系のご飯?の書き方が、すごく食べたくなりました。あっちのほう旅してるから書けるのかな。すごく楽しそうに書いてて、すごく好き

 

――分かります。うすいビールを飲みながらガンガン食べたくなりました

シオリ:自分の知らない世界がたくさん出てくると、楽しくなりますね

 

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*1:鹿児島市武岡1-23-7。テーマは「本で旅する」らしい。店長は角田光代さんを鹿児島に招いた張本人。

*2:唐突に登場したかのように見えるつばめさんですが、インタビューの横でずっとユイちゃんとお絵かきをしていました